天涯の砦と老ヴォールの惑星

久しぶりにブックレビュー。
小川一水さんの評判は前々から知っていた。「第六大陸」で星雲賞日本長編部門に輝き、続いて「老ヴォールの惑星」で短編部門も受賞した。
なんだかんだで新しいものに手を出せない性格で、一冊も読んだことがなかったのだが、先日来日した(笑)Sさんの下さった書籍に含まれていたので読んでみた。

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

面白いが、わりとライトですらすら読めた。「老ヴォールの惑星」は表題作ほか3編の短編からなる。
読んでいて思ったのだが、どの作品も一貫して困難や問題に直面した後の希望を書いているように思う。「幸せになる箱庭」も例外でなく。小川さんは好きな作家に笹本祐一秋山完秋山瑞人を挙げている*1が、こうしたことも無関係ではないだろう。
個人的な感想としては*2、「老ヴォールの惑星」が星雲賞を受賞した理由はよくわからなかったが、概してそんなものなのだろう。僕は「漂った男」の方が好きだ。少なくとも「第六大陸」は、また機会をみて読むことになると思う。
と、ここまで書いて、星雲賞を受賞していたのは「老ヴォールの惑星」そのものではなくて、収録されている「漂った男」の方だということがわかった。勘違いしていたらしい。やっぱりか。それならば文句はない。

「私たちは興味津々なのにね。ノックぐらいしてほしい。……エイリアン、ETI。楽しみだなあ。震えてくる。」
「君はそういうの好きだよな」
SETIは知性体の究極の娯楽よ?」
小川一水「幸せになる箱庭」(「老ヴォールの惑星」収録)より

なんだかSETIの本質をついているようで、この文言は気に入った。そういえば、先月アーサー・C・クラークが90歳の誕生日を迎えたそうで、

He announced three birthday wishes: for world adoption of cleaner energy sources, evidence of alien life, and lasting peace in Sri Lanka.
Sir Arthur Clarke is 90
http://blog.wired.com/sterling/

ちなみにクラークさんは現在スリランカ在住。

*1:http://homepage1.nifty.com/issui/issui1.htm

*2:個人的でない感想ってなんだ?