火星鉄道一九と巡洋艦サラマンダー

先日、来日したSさんに会ったことはここに書いた。そのときに「谷甲州は読みましたか?」と聞かれた。その時点では「惑星CB-8越冬隊」は読んでいたが、今回読了した2冊は購入して置いてあった。シリーズを一応順番に追おうと思っていたからだ。しかしながら聞いてみると「あんまり関係ないよ」とのことだったので読んでしまうことにした。(実は「楽園のしっぽ」より以前に読み終わっていた。)

偶然か何なのか、ちょうど航空宇宙軍史における外惑星動乱(第一次)の前期・末期という2冊で話が繋がっていた。基本的に時代を同じくする様々な場所での短編を集めたもの。
「惑星CB-8越冬隊」はちょっと特殊であることは知っていたのだが、こちらはもうガチガチのハードSF。表題作「火星鉄道(マーシャン・レイルロード)一九」を読んだときはまだ世界観におっつかなかったが、読み始めてすっかりハマった。
基本的にほとんど男しか出てこないし、内容も硬派だが、いわゆる宇宙戦艦のようなものとは少し異なる。火星鉄道一九は火星における有人加速鉄道*1や宇宙空間を漂いながら射出されてきたタンカーを牽引し集めるための"タートル"が主役であったり、通信基地につめる技術士官と彼がつくった擬似人格「ソクラテス」の物語であったり。「機動戦士ガンダム」で言えば、RB-79/ボールが主役のような感じ。
哲学的な深さとかイーガンなどのような世界観か何かがあるわけじゃないけれど、藤沢周平の「隠し剣孤影抄」のような読み物。人間と機械が一体化して主役を演じている気がする。機械萌えな人はきっと気に入ると思う。面白い。

*1:これも名前だけだとなんのことだかわかり難いが、いわゆる列車のための鉄道ではなくて、艇や貨物を宇宙へ射出したり、減速したりするための鉄道。