隠し剣孤影抄

順番は逆になったが、藤沢周平の「隠し剣孤影抄」を読んだ。山田洋次監督作品「隠し剣鬼ノ爪」を含む8編の短編集。実に面白かった。

新装版 隠し剣孤影抄 (文春文庫)

新装版 隠し剣孤影抄 (文春文庫)

僕はこれまで山田洋次さんのイメージで藤沢周平さんは「慎ましくとも平凡な暮らし」とか「下級武士の哀しみ」のような、なんというかのんびりとした内容の小説を書くのだろうと勝手に思い込んでいた。でもこれと続編「隠し剣秋風抄」を読んでイメージがかわった。文芸的というよりもひとつの娯楽小説としてとても楽しめる。
それにしても「隠し剣鬼の爪」は中でもとても気に入ったけれど、短編だからこそ良いということもあるのではないかなと思う。「盲目剣谺返し」もそうだが、長く描けばそれだけ颯爽とした感じが薄れる。哀しい話であってもすっきりと描かれているところが僕は好きです。
なんというか「下級武士の哀しみ」というよりも「何かしら愚かな*1男女のお話」という印象だった。
ちなみにこの本も新装版が出て少し厚くなっていた。

*1:下級武士であることがこの愚かさを生み出している要因であることもある。